今年は記録的な猛暑が続きましたが、ようやく秋らしくなってきました。
花屋さんでは秋の七草が出揃い、秋の歳時記に欠かせない草花も、最近ではスタイリッシュなインテリアに合わせて和花と洋花を組み合わせたり、モダンな飾り方を工夫しています。
さまざまな世代の方に日本の歳時記を楽しんでいただきたく、秋の草花を使った和のテーブルアレンジを飾りました。
和の秋草と言っても、リンドウはパステルブルー、フジバカマは斑入りの「フジバカマ ピンクフロスト」、キビは「ペニセツム パープルマジェスティ」と、姿形もおしゃれで、花名も今どきです。
最近はドライフラワーのような燻んだ色合いやシックな色合わせを好む傾向があるため、色は控えめにしました。
ちょっとした時間や空間にも、花があると癒されます。
秋には定番の菊も、最近では「デコラマム」が特に人気で、装飾性が高くドラマティックな風格を持っています。
年の春、ヴェルサイユ宮殿の敷地内にあるホテル「ルグランコントロール」に宿泊した際も、ロココな様式の室内に、デコラマムや小菊が美しく飾られており、その組み合わせに見惚れてしまいました。
菊といえば、少し前から「花手水(はなちょうず)」の流行で、菊が身近になりました。花手水は、神社やお寺の手水舎にある水鉢に季節の草花を浮かべ、参拝者に癒やしを与えるものですが、元々は朝露で身を清めることを指す言葉でした。しかし、コロナ禍で手水舎の利用が制限されたことをきっかけに、使われない手水鉢に花を飾ることで新たな文化が生まれ、色とりどりの花が水面に浮かぶ見た目がフォトジェニックなことから、SNSを中心に人気が広まりました。その中でも、色が豊富で持ちの良い菊が見直され、花手水のアレンジ作品もブームとなりました。
日本人はいにしえから菊の美しさに心惹かれてきたのでしょうか?最近の私のマイブームは、和だけでなく、洋やシノワズリーな「中国茶」や「薬膳料理」のテーブルコーディネートにも華やかな菊を活用することです。
秋の七草や菊を通じて季節の移ろいを感じることができるのは、日本の文化の素晴らしさです。これからも、四季折々の花々を楽しみながら、心豊かな時間を過ごしていきたいと思います。
皆さんもぜひ、身近な花を取り入れて、秋の訪れを楽しんでください。
鬼頭郁子
旬を取り入れた花とテーブルの教室は主婦からプロまで幅広く支持され、全国から生徒が通う。
サロン主宰やスペシャリストを目指す方も多く、多数の教室主宰者を輩出、その育成にも力を入れる。
トップブランドのコーディネートやプロモーションに関わるなど、多くの企業の花や食文化に関するセミナーをおこなっている。
著書「上質な暮らしの提案-アールドヴィーヴルを楽しむ10のアプローチ」(講談社)他多数。
銀座にてリモージュ磁器「アビランド」日本公式販売店 http://musee.co.jp/
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