新年の祝い花には、歳神様をお迎えする松に合わせて、紅白の梅、柳、色鮮やかな菊、蘭、そして、赤い実の付けた千両、オモト、南天などが代表的です。
お正月の花材には、相応しい言われがそれぞれありますが、南天は「難転」とも書き、文字通り「難を転ずる」という意味を持ちます。
幼かった頃、家でお祝い事があると小豆好きな祖母がお赤飯を作ってくれました。お重箱や器に入れ、その上に庭に植えられていた南天の葉を手で折り、お赤飯に添えるのが不思議に思えて、祖母に尋ねた事がありました。本当は、南天の葉にはお赤飯が傷みにくいという効果があり、防腐剤のためなのですが、祖母は「南天は、事故や病気や災難を福に転じてくれる葉っぱなの。良い事があったという幸せを分け合うと同時に、不幸や悲しい事がないように、全て幸運に転じますようにと言うおまじないなのよ」と教えられ、子供心に魔法の葉っぱのように思え、特別に感じていました。そのせいか、大人になってからは、ついつい南天の絵柄の漆器などを買ってしまったりします。
また、南天の葉が添えられたお赤飯は、神棚や仏壇にお供えしたり、親しい方にお裾分けとしてお届けする事もあり、時間が経過しても防腐剤効果があるだけでなく、南天の汁には、お腹をこわした時の解毒作用もあるそうです。
南天には難を転じる事だけでなく、邪気を払う強い力があるとも言われ、「表鬼門(北東)」や「裏鬼門(南西)」の方向に植えられ、魔除けや火災除けなどの「鬼門除け」とされました。節分には、ヒイラギを「表鬼門(北東)」に、南天は「裏鬼門(南西)」に飾ると良いそうです。
今年のお正月には、南天の深い意味を改めて思いながら、赤く艶やかな実が付いた南天を飾りたいと思います。
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