4月から5月にかけて、紫や白の長い花房をつける藤の花は、古来から深く日本人に愛されてきた、春の花の一つです。花房が豊かに垂れ下がって咲く佇まいから、日本女性の優しさ、謙虚な奥ゆかしさを連想させると言われています。また、このお辞儀をしているような花姿から、藤の花には、「優しさ」や「歓迎」といった花言葉がついています。藤の花を持って踊る「藤娘」の愛らしい姿は、日本画や日本人形にもよく表され、日本を訪れる多くの海外の人々の目に留まっている事でしょう。
藤棚と呼ばれる棚に、たくさんの花房が次々に開花していく様子は、絵巻物のような華やかさです。藤色の紫は、奈良時代より、古典では「懐かしき色」といわれ、「心が惹かれる色」「親しみを感じる色」とされます。この紫色は平安貴族の衣装にも多く用いられ、高貴な人の色として、和歌や物語にも象徴的に描かれています。
また、藤の色に因んだ高貴な女性といえば、『源氏物語』に登場する光源氏が恋焦がれた女人「藤壺の宮」、そして藤壺の姪で、光源氏が愛情を込めて理想の女性に育てあげた「紫の上」を思いうかべる人も多いのではないでしょうか?姿も色も美しく、芳醇な香りの藤の花ですが、切花としては、水揚げが難しく、花もちも悪く、生け花として部屋に飾って楽しむのには不向きです。部屋に飾るには鉢植えの物がいいと言われますが、成長するにつれての鉢の植え替えが難しく、また毎年花を楽しむには園芸を得意とする人でないとならないようです。色も姿も美しい藤を、身近に飾って眺めたいと言う願いから、着物や工芸品の図案にはよく使われてきました。
藤の花の抹茶茶碗は明日香窯 山本義博氏の錆絵白藤分茶碗
藤は繁殖力が強く、ツルが長く伸びることから「長寿」や「家運隆盛」また、花房がたわわに咲くことから「子孫繁栄」の象徴とも言われています。藤の絵柄や刺繍の小物などは、まさに春のプレゼントにおすすめです。
HANAE MORIオリジナル 藤の花スカーフの優美な花姿と高貴な色は、“感謝とありがとう”の想いと共に、「母の日」の贈り物として如何でしょうか?
江戸後期の絵師 円山応挙の藤花図。藤の花房は写生画風の真骨頂と言われる代表作の一つ(根津美術館所蔵)
鬼頭郁子 旬を取り入れた花とテーブルの教室は主婦からプロまで幅広く支持され、全国から生徒が通う。 |
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